[#「でえだらぼっち」に傍点]が喧嘩に来るから、それを怖がっているような八幡様じゃあ、八幡様の有難味が薄いや、でえだらぼっち[#「でえだらぼっち」に傍点]が来たら来たように、俺らがなんとかひとつ掛合ってみてやろうじゃねえか」
米友はしきりにでえだらぼっち[#「でえだらぼっち」に傍点]のことを言って当《あて》のない臂《ひじ》を張ってみましたが、それも暫くすると、眠気に負けたらしく、羽目《はめ》へ寄りかかってコクリコクリと漕《こ》ぎ出してしまいました。
「あ、眠っちゃいけねえんだ」
茶釜を溢《あふ》れた沸湯《にえゆ》が、炭火の上に落ちてチューと言った音で米友は眼を醒《さ》ましましたが、すぐにまた漕ぎはじめてしまいました。
やや暫く居眠りをしていた米友が、
「あ、また眠っちまった」
と言って二度目に眼をさました時は、何か気にかかるようなものがあるような様子です。
「はてな、今、足音がした、たしかにここで足音がしたに違えねえんだ」
と言って、米友は眠い目を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って鳥居の方から外を見ました。
「誰だい、誰か来たのかい」
と咎立《とがめだ》てをし
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