ん、女子供を買って来て危ねえ芸当をさせて銭をもうける職業《しょうべい》に似合わねえ、あのくらいの仕置《しおき》が見ていられねえでどうする。野郎に軽業をさせて今日はお前と俺がお客になって見物するんだ、この桟敷《さじき》は買切りだから誰に遠慮もいらねえ、首尾よく野郎の芸当が勤まれば、二人の手から祝儀をくれてやらあ」
「親分、どうしても解いて上げることができなければ、いっそ殺してしまって下さい、あんな目に会わされているより、一思いに殺されてしまった方がよいでしょうから。わたしも見ていられないから、早く殺してやって下さい」
「殺しちまっちゃあ、身も蓋《ふた》もねえや、ああいう野郎にはいろいろの芸当をさせてみて、死にかかったらまた水を吹っかけて生き返らして、またやらせるんだ。まあ、お角、一杯飲みな。俺があの野郎をあんな目に遭わせるから、俺は鬼か魔物みたようにお前の目に見えるか知れねえが、ずいぶんああしてやっていい筋があるんだ。あの野郎の生立《おいたち》から国を出るまでのことを残らず知ってるのが俺だ、俺にああされてあの野郎には文句が言えねえ筋があるんだ、俺にああされたから野郎は本望ぐれえに心得てい
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