小突《こづ》き廻してみたのであります。米友は、これらの連中の譜代の家来でもなければ臨時の雇人でもない。甲州へ行こうというのは、必ずしもこの人の附添が目的なのではないのです。これは行きがけの駄賃のようなもので、米友はお君に会いたくてたまらないから、それで甲州へ行く気になったものであります。
この附添は頼んだものでなくて頼まれたものである。いつ断わられたところで敢《あえ》て痛痒《つうよう》を感ずるわけではないけれど、ここで断わるというのは、あんまり人をばかにした仕打ちであると思いました。それだから米友は、
「勝手にしやがれ」
と言って、またその金一封を小突き廻しました。金一封を小突き廻したところで始まらないのであるが、この場合、米友の癇癪《かんしゃく》のやり場としては、どうしても眼の前の金一封が的《まと》になります。
「ばかにしてやがら、こんな金なんぞ要《い》らねえ」
米友はいったん、左の方から小突き廻した金一封を、今度は右の方から小突き廻しました。その有様は、掴《つか》んで抛り出すのも汚《けが》らわしいといった手つきであります。
よしよし、これからは一本立ちで甲府へ行って見せるとも
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