ましたけれど、これからはもうお前さんの勝手に旅をしてようござんすよ」
「ええ?」
「お前さんは、これから江戸の方へ帰りなさるとも、また甲府の方へ行ってみようとも、もうわたしたちにかまわないで、自分の気儘《きまま》にしておいでなさい」
「うむ」
「これは少しだけれど、ほんの、わたしたちの志《こころざし》、どうぞ納めておいて下さい。それから、もしお前さんが甲府へ行っても、今までの調子で心安立《こころやすだ》てに、殿様のお邸なんぞへ無暗にやって来られては困ることもあるから、そこは遠慮をしておいておくれ、そのうち御縁があればまた何とかして上げないものでもありませんからね」
金一封を包んでそこに置いたまま、眼をパチパチさせて口を吃《ども》らせている米友を見返りもしないで、お絹はさっさとこの場を立って行きました。
お絹の置いていった金一封を前にして米友は、暫く呆然《ぼうぜん》としていたが、やがて冷笑に変ってしまいました。
「ばかにしてやがら」
その一封を横の方から突いてみました。突いてみたのはなにも、その中にどのくらい入っているかというのを試したわけではありません。あんまりばかばかしいから、
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