はいちだんと大口をあけて笑い、
「柔術《やわら》の手だとも、俺が新発明の柔術の新手だわい、尤《もっと》も古い型を少しは取り入れてあるんだがな、それを場合に当って器用に施《ほどこ》し用いたというのが拙者の働きさ」
「その型をひとつ、伝授を受けたいものでございますね」
「あはははは、いいとも、二両取りの型をひとつ話してやろう。まず最初に茶袋が、わしの胸倉を取った時、その手先を逆に取り返したわたしの働きを見たかい。あの時それ、そっと一両握らしてやった」
「なるほど」
「そうして利目《ききめ》のところを見ていると、グンニャリと来たから、こいつは手答えがあるわいと、それを下へ持って行って西洋流の握手をやる時にまた一両、それで都合《つごう》二両取り、わしの方から言えば二両取られだ、それでスッカリ柔術が利いてしまった。二両取りの新手というのは、つまりそれだけのものさ」
「なるほど、そんなことだろうと思って、私もあの時にお手の中を見ていました。私の方でその手を先に用いさえすれば何のことはなかったのでございますが、あの茶袋の言い分があんまり癪《しゃく》にさわるものでございますからツイ持前が出て、先生に落
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