ら》し候所、何者の仕業に候|哉《や》、取片附け候段、不届|且《かつ》不心得につき、必ず吟味を遂げ同罪に行ふべき者也。
月 日[#地から3字上げ]報国有志
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから1字下げ]
此高札三日の内、取片附け候者|有之《これあら》ば、役人たりとも探索の上、必ず天誅すべきもの也」
[#ここで字下げ終わり]
米友はその文句を読んでしまったが、腑《ふ》に落ちないことがありました。
「この札はこりゃ誰が立てたんだ」
米友は独言《ひとりごと》のように聞いてみましたけれど、誰も返事をするものがありません。
「この高札三日の内、取片附け候者あらば、役人たりとも探索の上、必ず天誅すべきもの也てえのは穏かでねえ」
米友が仔細《しさい》らしくこんなことを言い出したから、集まっていた人は、それを聞いて滑稽に思うよりは怖ろしく感じました。そうして何者がそんなことを言うかと思って、声の出たところをよく見ると、人の股《また》の間にモゴモゴしている米友でしたから、みんなプッと吹き出しました。
米友にとっては笑われる自分よりも、笑うやつらの方がおかしい。単純な米友は、理由なきに冷
前へ
次へ
全135ページ中31ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング