頭の猛虎に襲われましたる折に、右の股《もも》を牙《きば》にかけられ、すでにこうよと見えたるところを、取り直して、グサと突込みました一槍で、猛虎の口から尻まで突き通して仕留めましたその働きが、国王殿下のお耳に入り、この通り首にかけたる金銀のメタル、これが印度国王殿下からの賜わり物にござりまあす。それより以来《このかた》、当人は右足の自由を失いまして片足の芸当、高いところは十丈の梁《はり》の上を走り、低いところは水の底をくぐる、馬に乗りましてこの槍を使いますれば馬上の槍、我が朝におきましては宝蔵院の入道、高田又兵衛といえどもこれには及ばず。嘘偽《うそいつわ》りと思召すなら御見物の方々、御持合《おんもちあわ》せの手裏剣《しゅりけん》なり鉄扇なり、または備え置きましたる半弓、石、瓦の類《たぐい》をもって、御遠慮なく当人の四肢五体いずれへなりともお覘《ねら》いをつけ下し置かれ、まんいち当人の身に一つでも当りましょうならば、その場において、ここにござりまする虎の皮三枚、豹の皮二枚、これをお土産《みやげ》までにどなた様にも差上げまする。長い浮世に短い命、こういうものが二度とふたたび、日本の土地へ参り
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