この土地に来ているうちに出来たこと、届かなければそれまででござんすが、こうして土地の人が総出で心配をしておりまする中で、わたくしどもも何とかして上げたいもの、できないまでも……」
「待て、待て、この間、山崎が書いて行ってくれた手紙、甲府の勤番へ宛てての紹介状があったはず、あれを出して見せてくれ」
竜之助はお徳の話とは別に、思い出したように手紙のことを言うと、お徳は机の抽斗《ひきだし》から取り出した一通。
「その表書《うわがき》の宛名になんと書いてあるか読んでみてもらいたい」
竜之助は今までそれを打捨てておいたが、この場合に思い出すと、お徳は覚束《おぼつか》なげにそれを読んで、
「御組頭神尾主膳様と書いてござんす」
九
広いところを三間《みま》も打払って、甲府勤番の役人が詰めています。役人二人は床の間を背にして大火鉢の前に睥睨《へいげい》している左右に、用人、若党のようなのが居並んで、その前には望月の若主人が両手を後ろへ廻されて、その間を十手《じって》でコジられて苦しがっています。
「さあ申し上げてしまえ、お上《かみ》のお調べによれば古金二千両、新金千両、その
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