ないでいたが、同じ旧家の佐野だとか松本だとかいう老人が飛んで来て、望月の老主人を慰めながら相談の額《ひたい》を鳩《あつ》めていると、
「甲府のお役人様は元湯へお泊りなされた」
 村の人の報告であります。元湯とは机竜之助が泊っているところ。
「それでは、もう一度、みんなしてお願いを致してみましょう、そうしてお話合いで済むようでしたら、若旦那をお願い下げにするように、骨を折ってみようではございませぬか」
 お役人の一行が元湯へ泊ったと聞いて、佐野の老人と松本の老人とを先に立てて、お願い下げの運動をやってみようということになり、お役人にお目にかかって怖る怖る伺ってみると、さきの権幕《けんまく》とは少しく打って変り、なんとなく手答えがあるようでしたから、
「さて、存外、話がわかりそうでございます……」
と言って、その次の難問題に就いて老人たちと望月の主人と親戚とが評議をしました。
「百両」
 まずその辺の相場かなと思う者もありました。みすみす名の知れない金を百両出すのも業腹《ごうはら》だという面《かお》をするものもありました。百両で若主人の身体《からだ》が釣替《つりか》えになれば安いものだとい
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