な気持がする」
その夜、竜之助は山崎譲と夜《よ》更《ふ》くるまで語り合ったが、山崎は竜之助にいろいろと忠告をしたり、早く故郷へ帰るように、道中の不便があらば、知合いの甲府の勤番《きんばん》に頼んでやると親切に言ったが、竜之助はなんとも別に定まった返事をしなかったけれども、先を急ぐ山崎は若干の見舞金と、甲府の勤番へ宛てての竜之助の身の上依頼状などを認《したた》めておいて、その翌日、ここを立ってしまいました。山崎を送った竜之助は、ひとり宿の二階の欄干に凭《もた》れていると、
「あれ、お嫁様が」
という遽《にわ》かの騒ぎ。
「あれが望月様の若奥様。まあごらんなさい、あの髪の毛、あのお面色《かおいろ》、あの髪飾りの鼈甲《べっこう》の、水の滴《したた》るような襟足《えりあし》の美しさ、あのお紋付、あのお召物、あの模様……ほんにお館様《やかたさま》のお姫様とても、これほどのことはおありなさるまい」
姦《かしま》しい人の声。ははあ、これが、いわゆる八幡村から来たという嫁御寮、ただでさえ物見高い嫁入騒ぎ、このあたりの大家ということであるから、物珍らしい山家の人には、さながら信玄公の姫君でも御入来《
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