、よろよろ、よろよろと濠端道をよろめき歩いて、駕籠屋駕籠屋と通りかかる辻駕籠を呼び留めました」
「…………」
「そこで槍を投げ捨てて、御徒町へ行けと駕籠屋へ言いつけたままで、垂《たれ》を上げて駕籠の中へ身を隠してしまわれました。そうして駕籠が飛んで行くのを見送った時に、ようやっと[#「ようやっと」に傍点]わたしは歩けるようになりました。その翌日、島田先生が急病で亡くなられたという噂を聞きましたから、それとなくその御最期の模様を人からたずねてみますと、あれからお家へお帰りになり、床の間の前に坐って香を焚《た》いて、座禅とやらを組んだままで亡くなっておられたということでありました」



底本:「大菩薩峠2」ちくま文庫、筑摩書房
   1995(平成7)年12月4日第1刷発行
   1996(平成8)年2月15日第4刷
底本の親本:「大菩薩峠」筑摩書房
   1976(昭和51)年6月初版発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:(株)モモ
校正:原田頌子
2001年6月1日公開
2004年3月6日修正
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