いへん遅くなってしまいました」
 お絹の髪も衣裳もかなり崩れている、それを程よくつくろって来たものらしい。
「心配していました」
 がんりき[#「がんりき」に傍点]は、お絹の手を取って、やはり囲炉裡《いろり》の一端に坐らせる。
「ひどい目に遭《あ》ってしまいました、あの宇津木兵馬という若い人のために取押えられて虜《とりこ》になるところでしたが、折よく変な男が出て来て助けてくれましたから、やっとこっちへ逃げて来ました」
「村はずれまで迎えの者を出しておきましたはずでしたが」
「その人に、そこまで連れられて来ました。ああ、飛んでもない目に遇ってしまった」
 お絹は炉の傍に坐りかけてこの内の模様を見ると、荒れ果てた古寺。
「お寺ですね」
「こんなところでございますが、今晩はここで御辛抱《ごしんぼう》なすって下さいまし」
「お寺とは知らなかった」
「こんなわけでございますから」
 がんりき[#「がんりき」に傍点]は何かと言いわけをする。
「ここへ泊めてもらうのですか」
「へえ、ただいま夜具《やぐ》蒲団《ふとん》を里まで借りにやりましたから」
「ここへ三人で……」
 お絹は、なんとなく呆《あき》
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