大菩薩峠
間の山の巻
中里介山

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)内宮《ないくう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)古市|寂照寺《じゃくしょうじ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]
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         一

 内宮《ないくう》と外宮《げくう》の間にあるから間《あい》の山《やま》というのであって、その山を切り拓《ひら》いて道を作ったのは天正年間のことだそうであります。なお委《くわ》しくいえば、伊勢音頭《いせおんど》で名高い古市《ふるいち》の尾上坂《おべざか》と宇治の浦田坂の間、俗に牛谷というところあたりが、いわゆる間の山なので、そこには見世物や芸人や乞食がたくさん群がって、参宮の客の財布《さいふ》をはたかせようと構えております。
 伊勢の大神宮様は日本一の神様。畏《かしこ》くも日本一の神様の宮居《みやい》をその土地に持った伊勢人は、日本中の人間を膝下《ひざもと》に引きつける特権を与えら
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