腰をかけて、その斥候《ものみ》を待っています。
「諸君、仕合せよし」
村本と荷田は欣々として帰って来て、
「山小屋がある、その中には、猟師と見えるのが、炉《ろ》に火を焚いて、何やら獣の肉を煮ている」
「ナニ、獣の肉を?」
肉と聞いて、うまそうな唾《つば》が口の中から迸《ほとばし》るようであった。
「敵の間者《かんじゃ》ではないか」
「いや、そうではないらしい、たしかに生《は》えぬきの猟師と見受けた」
「おしかけろ」
「行ってみろ」
村本と荷田は案内する。九人はそれについて行って見ると、山腹のやや平らかなところを程よくこなして、そこにかなり大きな掘立小屋《ほったてごや》があります。
「頼む……」
「うあ……」
中で妙な調子の返事がある、面を出したのはまさに猟師に違いない。ずっと前に、はじめて三輪の藍玉屋《あいだまや》の不良息子の金蔵に鉄砲を教えた惣太《そうた》でありました。
惣太は面を出して見ると、都合十一人、筒袖《つつそで》に野袴《のばかま》をつけたのや、籠手《こて》脛当《すねあて》に小袴や、旅人風に糸楯《いとだて》を負ったのや、百姓の蓑笠《みのかさ》をつけたのや、手創《てき
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