た分もある、春秋社からも和製日本紙本を出しているから、それ等はさほど珍書とはいえない、著者の手製印刷本は前に云う通りルビが付いていない美濃紙四つ折刷の極めて粗末の印刷で、ところどころ不鮮明で読めないようなところもある。印刷発行の日付第一冊「甲源一刀流の巻」は大正―年―月―日印刷の同―日発行となって居り、第二冊「鈴鹿山の巻」は大正七年四月十日印刷の同二十五日発行となっている。
それをまた誤って仮名のついた後に自由活版所や春秋社版と間違えて、これがその原本ではないかと余の処へ持ち込んで見せる人もあるが、成るほど和装日本紙ではあるけれどもそれは前にいう純粋な手製本とは全く違うのである、ところが、つい近日田島幽峯君が突然持ち込んで来た「鈴鹿山の巻」の一冊は確かにその手製本にまぎれもないから早速証明文を巻頭へ書きつけてあげた、もし諸君のうちで、それに該当するような書物をお持ちでしたら小生の許《もと》までお届け下さればいつでもその証明自署をしてあげる。
とにかくそういう風にして第一冊第二冊は手製第三冊以下は自由活版所でたしか第十冊「市中騒動の巻」あたりまで進行させて行った処へ或日のことYMDC
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