論文なのである。――だがこういうことが出来るために、最後に最も大切なのは、勘である、感覚である。事物に対して持つ直覚の優秀さである。之は不断の訓練に俟つものだ。
[#改段]


 6 校正


「そのやうな」は「ような」とは書かない。「しようと思ふ」は「しやう」とは書かない。「用ゐる」は「ゐる」又は「ひる」であって、決して「用ふる」や「用ゆる」であってはならない。校正者はこの程度の国文学者であることが必要だ。
 なる程発音通りに仮名を使えという主張がある。之は確かに進歩的な主張だと思う。併し、仮名通りに書かない処の国語の習慣に従った原稿である場合には、少なくとも以上のように校正することが必要だろう。
 それから又、文法的に正しくあろうともなかろうとも、現に大衆的にそう使っている以上、それでいいではないかという反対もあるだろうが、それだけの覚悟があるなら又別だが、併しそれにしてもさっきのような点は、知っていなくてはならぬ、ということに変りはあるまい。之を知らない程度の校正者は何を仕出かすか安心ならぬ。
 校正者は国文法だけではなく、漢字の熟語や、英独仏露、エス、ギリシア、ラテン其の他の語
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