_家であるよりも、云って見れば「評論家」というタイプとして、大へん優れているのだと私は思っている。
 中条(宮本)百合子の序文は、日本プロレタリア文学運動に於ける彼の役割を規定することに於て、簡にして要を得ている。中条氏で思い出したが、彼女の『昼夜随筆』という評論集が出た。読んで見たが仲々いい。宮本顕治と並べて彼女の評論家としての独自の価値を、世間はもっとハッキリ認識すべきだろう。
[#改段]


 6 コンツェルン論の「結論」


『日本コンツェルン発達史』(ワインツァイグ著・永住道雄訳)が出た。菊判ではあるが二百頁を少し越す程度の、手頃の分量の本である。コンツェルンに関する本、しばらく前の習慣で云えば「独占資本」とか「財閥」とかに関する本は、やや分量の大き目のものが多いようだが、この本は之を圧縮したような特色を有っている。日本のコンツェルンの通論として多分最も便利なものだろうと思われる。
 モスコウの世界経済世界政治研究所の監修になるもので、外国人の書いた日本研究だからあまり役には立つまい、などと思う人がもしいるとすれば、勿論そういう人は今日の常識を持たない人間である。日本の事情を
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