相Oからの距離、「特に云わばモスコウ的距離」から見ることは、狎れっこになった国内事情に対して新鮮な光をあてることでもあるばかりでなく、之を世界的なスケールから要約することでもある。而もこの本では更に、「日本型コンツェルンの一般的特徴づけ」の章とか、「日本型コンツェルンの政治生活」の章とかで見られるように、コンツェルンに対する着眼点を社会的政治的要約にまで高めることに、努力が払われている。例えば「日本型コンツェルンの特徴の一つは、資本の投下部面が種々様々であり、しかもこの種々様々な資本投下部面が非常に屡々コンツェルンの基本的生産と殆んど何らの依存関係もなく、また結びつきもないという点である。」こういう特色で行けば、当然この「日本型」が社会的に政治的に何を意味するかに注意を向けさせる筈だ。
 勿論資料の点ではセカンドハンドのものが多く、資料的オリジナリティーを期待するのは控えねばならぬ(鈴木茂三郎氏の独占資本に関する数著を最も屡々引用している)。だが私などが最も興味を惹かれるのは、資料のオリジナリティーの如何という、専門家的な一種の業績計算法に基く検討よりも、寧ろそれから出て来る社会的結論
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