段階には色々ある。この書物を貫く進歩性は云わば自由主義的乃至社会民主主義的なもののそれに近いだろう。そのことの良し悪しは別問題だが、とにかく今はこの進歩性は尊重されねばならぬ。現にこうした「進歩的」な辞典、総合的見地のハッキリした而も翻読されるべき性質を持つ進歩的辞典は、日本で最初のものなのだから。※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]図も四十七入っていて、中々手のこんだ注意深い編集振りである。
[#改段]
8 『人間の世界』を読む
『人間の世界』と清水幾太郎氏が呼ぶものは、社会対個人の世界であり、虚偽対真実の世界である、つまり真の人間は、或いは人間の真実は、個人の世界にあるのであり、之に反して偽った人間界或いは人間の虚偽は、社会の側にあるのである。
勿論この個人は、社会に先行する社会の要素のようなあの「個人」のことではない。社会の内から生まれ、社会の内に住みながら、なおかつ社会を抜け出で、之をつき抜けた個人のことだ。社会から奪還された個人である。その意味から云う限り、著者の立場は決して所謂個人主義ではない。社会的な個人が人間なのであって、
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