いうならば唯物弁証法を、もっとも入り易い形で与えて呉れる本はないか、とよく私は色々の人から尋ねられる。しかしこれは中々簡単に答えることの出来ない質問なのである。入り易いということは、単に読み易いとか考えずに理解出来るとかいうこととは別なのだ。それは無用なペダントリーがないということだが、それと同時に、濁った信用出来ないような変な命題にぶつからないことの方が理解を容易にするためにはもっと大切である。そればかりではなく、我々の直接に経験している世界へ色々の命題を結びつけて呉れるのでなければ、理解は活きて来ない。
 信用すべき教科書乃至参考書としては、すでにシロコフ・アイゼンベルクの『弁証法的唯物論教程』やミーチン・ラズウモフスキーの『史的唯物論』が翻訳されている。いずれもソヴェートの公認の書物で、国際的な価値を持っているのであるが、併し吾々は又吾々の手になった相当信頼すべき参考書が欲しいと思う。それは日本には日本に特有な特殊の文化的教養の与件があるからで、この与件にシックリと合った叙述を平明な然し澄んだ具体的な形でやって呉れる読み物が欲しいのである。
 最近特にこういう要求に答えるために、
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