少なからぬ人達が色々の唯物弁証法の読本を発表した。代表的なものとしては大森義太郎氏の『唯物弁証法読本』と、徳永直・渡辺順三・両氏の『弁証法読本』とを挙げることが出来ると思うが、永田広志氏の『唯物弁証法講話』は、これ等のものに較べて、今いった点でズット立ち勝ったものだと断言出来るのではないかと思う。
 永田氏はいわば私達の友達仲間だから、あまり褒めることは遠慮するが、元来もっともすぐれたロシア語翻訳者であった。だが優れたロシア語翻訳者は実は今日では優れたソヴェート思想文化の紹介者にならなくてはならない。同氏はその随一者だ。それから永田氏の一般に哲学に対する又特にブルジョア哲学に対する教養も亦注意しなければならない。氏はこの道でも相当確実な理解者である。それから、こういう素養に基いて最近同氏は可なり前進力のある独自の研究家として現われ始めた。それは主に雑誌『唯物論研究』で発表した弁証法の諸研究(認識論・論理学・弁証法・の同一性に関するもの)を見ても判る。
 で以上述べた同氏の三つの特徴がこの書物の内に非常に良く出ている。目次を見ると従来の翻訳された教科書と大同小異だが、叙述の内容は、現在の
前へ 次へ
全273ページ中203ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング