理解力の行きとどいた頭脳とを以て、読者に感銘を与える処が大きい。
だが本書の目標は書名が多少示しているように、ファシスモのイデオロギーであり、特にその系譜学(ゲネオロギー)である。かつて新明教授が東北帝大社会学研究室を動員して出版した『イデオロギーの系譜学』(上巻)(下巻は別名で出ている)は、世間であまり沢山は読まれなかったようだが、尊重すべき業績であった。本書の目標も亦、ファシズムに関する思想的系譜学の叙述にあるのである。この点については日本では他にわずかに今中次麿教授の『ファシズム論』(唯物論全書)中の論文があるだけであり、夫もジローネからの抜粋にすぎぬから、本書が殆んど最初の纏ったもののように考えられる。勿論外国文ではこの種のもの、又この種のものを含む本はおびただしく多いが、併し恐らく新明氏の仕事は之に勝るとも劣らぬものだろうと推察する理由がある。
ファシスモ・イデオロギーは勿論その特有な社会観念と国家観念とを中心とするものであり、その観念の推移(社会は即ち国家だという観念に到達するまでの)に懸る処が多い。ファシスモの社会・国家・及び協同体乃至協同体国家・の観念を評論したもの
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