轤黷ネいが、わが国になるとそれがもっと徹底的に露骨に、特有な形で低級なのである。
もっともわが国のブルジョア哲学の或るものは、ブルジョア哲学としては、国粋家を喜ばせるべく世界最高の水準に達しているようにも見えるだろう。然しそうした哲学は決して、自分の変り種である例の肉体主義式「体験」哲学を粉砕することを欲しないし、又事実それは出来ない相談なのである。けだしファッショ式な悟りや「肚」の哲学は、外でもない、わが国現代ブルジョア哲学そのものの優秀なカリカチュアに外ならないからである。
[#改段]
7 岩波文庫その他
現在発行されている文庫版の主なものは岩波文庫(レクラム版の装幀に近い)・改造文庫(ゲッシェン版の装幀にまねて及ばず)・春陽堂文庫などである。春陽堂文庫は本年(一九三〇年)七月現在ではほぼ千種に近いようであり、改造文庫は約三百五十種、岩波文庫は約六百種程あるようだ。他に数の少ないものでは山本文庫(三十種程)などもあるが、今の処まだ問題とするには足りないだろう。読者から見ると文庫版の一般的な特色がその廉価なことと、ありとあらゆる代表的な著作に権威ある選定を与えたものであるということとにあるのは、云うまでもない。なるべく安く、そして出来るだけ代表的な著述の全般的なセットを、なるべく信頼するに足る校訂によって手にしたいということが、読者の希望だ。
終局に於ける価格の問題から見ると、どの文庫版も大差ないと見ることが出来よう。星一つの値段は違っても、字数からいうとあまり価格の差はないようだ。問題はその内容の区別にある。まずありと凡ゆる著述の中からその代表的なものを選ぶという点になると、つまり、一切の学術文芸について多少とも古典的な意味を有つか、又は著しく大衆的な一般性を認められたものの内の良質なものか、を選ぶことになるわけだが、その範囲が広いという点では、岩波文庫が第一で、改造文庫・春陽堂文庫・の順でこれに次ぐのである。春陽堂文庫は主として文学のものが多く、改造文庫は文学と社会科学に限定されているといってもよいが、岩波文庫は殆んど凡ての文化領域にその関心を拡げている。これは代表的著作のセットとして、一般的な教養のために用意するには、必要な性質なのである。一般に文庫版は研究書や学術書というよりも一般的な教養の書物を提供する任務を持っているからだ。
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