く道徳問題に直接関係のある特殊諸問題(例えば性問題とか文学と政治との関係の問題とか)については、論述は限りなくなるのだし、又一応の道徳理論の教程にも存するのだが、併し結局プレオブラジェンスキーのこの小さなパンフレットが最も纏ったもののように思われる。
ヘーゲルは法乃至道徳を、自由なる絶対精神の発展段階の一つと見た。だが之は決して道徳についての説明[#「説明」に傍点]ではない。単に現前の道徳という諸事象の持つ形態を明らかにし、それが有つ一種の意義・意味を解釈したに過ぎない。ただの道徳意識や何かでなく、家族とかブルジョア社会とか国家とかいう、道徳的「実体」を見出したことは、確かにヘーゲルの卓見だが、処が折角のこの道徳的実体[#「実体」に傍点]も、絶対精神の現われだというのでは、之の分析を通じて夫が含む現実の諸問題を処理するのに、何の役にも立つまい。なる程こうした家族其の他の客観的な道徳的実体が人間の歴史にとって極めて重大な実質をなしているということは一つの事実だが、そういう事実を、歴史的に科学的・因果的・分析を用いて説明することと、この事実が単に世界史の発展の一段階だという意味を持って
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