度道徳が道徳律[#「律」に傍点]に限らぬように)というテーマの下に持ち出されていることを見ねばならぬ。即ち彼に於ては道徳の理論はもはや倫理学ではなくて正に「法の哲学」なのだ。ヘーゲルのこの法律哲学が所謂法律[#「法律」に傍点]の哲学でないことは云うまでもない(初期の労作を除けばヘーゲルの法乃至道徳理論は『法の哲学の綱要』――一八二〇年乃至一年――と『エンチクロペディー』第二版――一八二七年――とであるが、両者は殆んどその組み立てを同じくする)。
元来ヘーゲルが法乃至道徳と考えるものは正確には客観的精神[#「客観的精神」に傍点]と呼ばれている処のものだ。今日広く文化形象一般を客観的精神とも呼んでいるが、ヘーゲルでは、所謂文化(芸術・宗教・哲学)は客観的精神よりも一段高い精神の段階たる絶対精神にぞくせしめられている。そしてこの客観的精神より一段低い精神の段階は主観的精神であって、人間学や現象学や心理学の世界は之にぞくするのである。処で精神[#「精神」に傍点]なるものは実はヘーゲルによると理性の(或いは思考・イデー・概念の)最も高い段階に他ならない。理性乃至概念が最も直接に最もさし当りの姿
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