その濫觴でもない。
 だがそれにも拘らず、倫理の問題・道徳の問題は、古代から今日の倫理学に至るまで、一定の脈絡を以て伝承されている、と云わねばならぬ。ブルジョア倫理学にも実はありと凡ゆる形態があり、又この学問ほど様々な角度から試みられているものはない。例えばシジウィクは倫理学の方法をエゴイズムと直観主義と功利説とに分類しているし(The Methods of Ethics)、J.Martineau(Types of Ethical Theory,2 Vols.)はより広範な立場から倫理学の形態を区分している。現代では形式倫理学と実質倫理学との区別などが試みられている。だがそれにも拘らず総括的に見れば、今日のブルジョア倫理学は、古来の倫理思想乃至倫理学の、一応の決算[#「一応の決算」に傍点]でなければならぬのである。――なぜ一応の決算かと云うと、従来の倫理思想乃至倫理学は、何と云っても(多少例外と考えられる場合――例えばストイック学派の唯物論に見える倫理学までも含めて)、観念論に立脚したものであり、又事実多くは観念論自身の拠り処であったのだが、この観念論的倫理思想[#「観念論的倫理思想」
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