も何ともない当然な観念の再認識だと思うが)の検討ということになるのである。――私はそのために邪魔になるような通俗常識的な道徳観念[#「通俗常識的な道徳観念」に傍点]をまず整理したのである。
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 第二章 道徳に関する倫理学的観念

 道徳に関する理論乃至科学が、普通、倫理学[#「倫理学」に傍点]というものだと考えられている。なる程倫理学(Ethics)を言葉通りに取るなら、一切の道徳問題は倫理学の対象であると云っていい。なぜならこの言葉は性格(ethos[#「e」はマクロン付き(−)E小文字])と習慣(ethos)とから来たものであって、社会生活を営む人間の比較的外部的な生活規定である処の習慣風俗の問題と、その比較的内部的な生活規定である性格性情の問題とは、吾々の道徳問題の一切を含むと考えられるだろうからだ。
 そういう意味で、吾々は広く倫理思想というもので以て、道徳に関する意識を云い表わすことも出来ないではない。だがその場合、そこに含まれるものは所謂「倫理学」ばかりではないので、政治学・法律学・社会理論・人性論(人間学)・制度理論・実践哲学、等々も亦ここに含まれていなくては
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