生産を目標とする科学
――再三「科学と技術」とについて――
戸坂潤

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)巫術《ふじゅつ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)元来|巫術《ふじゅつ》文化の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)この応用[#「応用」に傍点]なるものは
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 科学(特に自然科学)と技術(第一に物的生産技術)との関係は、今日ではすでに陳腐な問題のように響く。少なくとも二つの間に密接な又直接な連絡のあることは万人の常識である。にも拘らず私には、ここにはまだ匿された疑問がひそんでいるように思われる。
 まず第一に、最近、科学的精神が提唱されること甚だ旺んであるが、勿論これは日本の現下生産技術の向上を促進する必要があるからのことだ。では一体何故科学的精神が生産技術を促進し得るのであるか。科学が技術に原則を提供するからであるか。併し技術において原則的であるものは必ずしも科学において原則的であるものと一つではない。「応用科学」とか「科学の応用」とかいう旧い言葉は今日でも無意味ではない。少なくともこの応用[#「応用」
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