勿論私などの断定の限りでないが新聞に現われた限りの資料を基にしてそういうのだ)、悪く常識的[#「悪く常識的」に傍点]にひねくり回そうとするものだから、容疑者の夫は新聞記者によって性格異常者や猟奇的犯罪性の所有者やにされて了っていた。探偵小説的興味を惹いていたのは、容疑者が自白しないので真相がハッキリしないからという純探偵的な理由からではなく、彼が殺人小説の耽読者であったとか何とかいう猟奇的な理由からのようだ。ここに常識は可なり思い切って錯誤をやっているのだが、世間の常識はウッカリしているわけだ。
 この事件でも、またぞろこの容疑者が私生児であったというような、結局例の血の迷信に基くものへ持って行こうとする。常識はいつでも同じ試みを、退屈でも反覆するものだ。

   三[#「三」はゴシック体]

 社説などは特別だが、少なくとも社会現象の一等日常市井的な現われを取り扱う社会面は、極端にいえば、一種の娯楽のページなのである。別に特殊な社会的関心を自覚していなくても、普通の読者が誰でもまず第一に見たがるのはこの欄なのである。之は明らかに一種の娯楽面であることを意味している。そして、同時に考え
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