葉をここから哲学的術語に仕立てることが出来ると思う。「模範青年」(和田勝一――『文学案内』同月)も風刺劇であるが(小説に直したって大して困らないことは今日の大抵の戯曲の特色だ)、尻切れトンボだ。模範青年は無論馬鹿野郎である。――憎悪も一つのモラルだ、ところで、それが社会機構の認識を透過して風俗にまで現われる時、時代的風刺作品(性格的風刺作品とは異る)となるのである。――なお「雪の記録」(沙和宋一)(『文学評論』)と芹沢光治良「石もて誰を打つべき」(『文芸春秋』)とは、衆議院選挙を取扱っているが、無論時事的文学ではなくて、重風俗文学にぞくしている。
かくて文学におけるモラルは時事物から初めて軽重風俗物から所謂「モラル」物にまで一貫しているのである。――最後に風俗の問題から見て特別の興味のあるのは、歴史文学の件だがそれは別の機会にしよう。
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4 文学・モラル及び風俗
一[#「一」はゴシック体]
モラルなるものは何と云っても最近の文壇の大きな問題である。それは流行っている。流行っているばかりでなく、同時に割合その流行が永続きしている。こういう現象は文壇では可なり珍
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