も、世間では苦もなく大衆的に通用している。――だがそれはそうでも、一体社会科学的[#「社会科学的」に傍点]に云って風俗とはどういうカテゴリーなのか、こうなるとあまりハッキリした既成の結論はないのである。処が、社会生活百般の事象に就いての考察が、或る本当の意味での大衆性をもたねばならぬならば、風俗の考察こそは、最も大事な理論上の設題の一つでなければなるまいと私は思う。之は大衆性[#「大衆性」に傍点]というものの理解にとっても、必要欠くべからざる一つの社会理論上のファクターだ。
二[#「二」はゴシック体]
風俗習慣などと続くように、風俗は勿論社会的習慣と密接な関係を有っている。処で云うまでもないことだが、社会に於ける習慣、或いは又習俗は、社会の生産機構に基く処の人間の労働生活の様々な様式関係によって、終局的に決定されているが、二次的にはこの生産関係を云い表わす社会的秩序としての政治・法制が維持発展させる処のものであり、そして三次的には社会意識や道徳律が観念的に保証する処のものだ。その際習俗は、云わば歴史的な自然性(意図的でも人工的でもないというわけで)を持った一つの与えられた社
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