だが所謂教授達の大部分のように、夫々の立派な又は影の薄い教員聖職ギルドを持てる程に、社会的に優遇されている先生方は、実際には大してその威厳について思い労らう必要はないようだ。内職をやっても、かけ持ちや原稿書きならば、名誉でこそあれ、威厳を損じるものではあるまい。困るのは小学校の先生なのである。
 ある時市内の某小学校の校長が、教え児である女給を誘惑しようとしたのを発見されて馘になった。無知な少女を誘惑しようとしたことは多分絶対に許し難い行為だろうが、その他の点はそんなに問題になるべき性質のものではないと私は思う。小学校の校長が待合入りをしたというのがいけないというなら、それでは小学校の校長の上に立って之に対して事実上の命令権を持っている官公吏又各種議員達は、何もそういうことはしないだろうか。もし先生だけがしていけないというなら、そんなに偉い先生を先生でない者が支配するという今日の教育行政組織は全く変な組織と云わねばならぬ。
 この事件で最も社会的意義のあるものは、実は小学校教員の内職問題である。例の校長が酔って女給をつれ出したのが、同僚が経営しているバーかカフェーだったからである。一体
前へ 次へ
全451ページ中297ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング