力な学生に仕立てるとは限らなかった。一頃世間は学生の赤化の原因はさし当り就職難にあるとも云っていたものである。でそう考えて来ると学生生活を歪曲しつつあるものはもはや決してただの就職問題=就職難だけではない。それから来る単なる条件反射のような意識だけでもない。之を通して学生は、社会に対する或いは寧ろ未来の社会に対する、希望と期待とを失って了っているのだ。それが今日の学生生活の歪曲を齎していると云うべきだろう。今日之は誰でも云っている処だ。
 学生は青年であり、即ち時代の新しい矛盾の下に発育して来た者だから、この矛盾が醸す各種のイデオロギーに著しく動かされる。と云うのは学生にとってはイデオロギーなるものの作用は極めて現実的なのだ。学生はイデオロギーに多分の信頼を置いている。既成社会の現実よりも遙かに多く、学生はイデオロギーに期待する。現実を踏み越えるイデオロギー、或いは寧ろ良い意味に於けるユートピアと云ってもよいが、この観念物や思想物に動かされる。青年の夢と呼ばれるものが之だ。処がこの現実を踏み越えようとするイデオロギーが社会的に一時通用しなくなると、もはや学生には何等希望の特権がなくなっ
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