うことが出来たわけだ。禍を転じて福となすという、弁証法的故知は、正に今日の文部省のために用意されたもののようである。
 新総長理学博士松井元興氏の抱負振りは、初めからどうも臭いと思っていた。正に氏の手腕によって、滝川問題は、立派に「京大問題」にすりかえられたのである。文部省の禍は文部省の福に転じたのである。小西前総長はこれをすりかえることが出来なかったばかりに、(氏の良心からか手腕の欠乏からか知らないが、)行き詰って了ったのであった。哲学者よりも科学者の方が、多くは政治的にうわ手ではないかとこの頃考える。とに角今後と雖も、「公平な」自然科学者には相当用心することが必要だ。
[#改段]


 減刑運動の効果

   一、反乱罪の効果

 例の五・一五事件の軍部被告と民間被告とで、罪名を別にするしないという件で、軍部乃至軍検察当局と司法当局との対立が問題になったことを、私はかつて述べた。民間では人を殺した者は殺人罪にするに反して、軍部では殺人罪ではなくて反乱罪で処断するのは変ではないかというのであった。
 併し之が別に何等対立を意味するものではないということは当時司法当局の声明によって一遍
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