で明白になって了ったことで、男の児に太郎という名をつけることと、女の児にお花という名をつけることとは、無論対立でも何でもないということが、その後段々判って来たのである。
 法律家でない一般人、少くとも私などは、法律のこの種の使いわけは甚だ尤もで、多分之を強力に主張したのは軍部側だろうが、流石は軍部だけあって、峻厳な英断を敢行するものだな、と感心したものである。
 〔66[#「66」は縦中横]字削除〕 果せる哉、軍検察当局は重刑を以て臨むというような意向を洩していたのである。
 こうして軍部の論告求刑の日は近づいて来た。凡ての疑問は解決されて了ったから、あとはただその日を待つばかりになったわけである。
 処が問題は或る意味で蒸し返されざるを得ないことになった。陸海軍法務局当局は、どう思ったか陸軍側の論告求刑の日である八月十四日に先立ち、大審院に林検事総長を訪い、軍部民間の五・一五被告全部に対する論告求刑に就いて協議を遂げ、その結果陸軍側の論告に加筆するために十四日の開廷を十九日に延期する旨を発表したのである。
 男の児と女の児とに同じ名前をつけられやしないかと、曽つてヤッキになって心配し
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