鼻であしらっていた相当批判的な読者でも、段々この事件に好意的関心を有つようになり、何か自分と一脈共通したものをそこに感じるようにさえなる。でウッカリしていると、この重大な×××××××したりなんかしたくならないとも限らない。だからこの上、新聞の一種の煽動的報道の尻馬に乗って、ウッカリ犯人××というような犯罪を犯さないために、五・一五事件というテーマ自身を積極的に黙殺[#「黙殺」に傍点]するのが、私の方針である。で決して私は今、五・一五事件の公判などを問題にしているのではない。
さて、戒厳令のためとかクーデターのためとか甚だ尤もなことを云うのである。だがこれが少くとも治安[#「治安」に傍点]を維持[#「維持」に傍点]することにならないことは明らかだ。仮に一市民である私の首が、何かの非合法的な組織によって覘われているとするなら、私の住むこの社会は決して治安の維持されている社会ではあるまい。治安維持とは、正にこうした事態を未然に防ぐことでなくてはならぬ。単に人間が大勢集まって大きな声を出したり、腕を組み合って元気好く歩いたり、自分の自由な考えを印刷にして配ったりすることは、何も治安を乱るも
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