氏は教育事業家[#「教育事業家」に傍点]なのである。昔、社会事業とか慈善事業とかいう、修身と企業との中間形態が存在したが、それが今日教育界にだけ残っている。それが教育事業なのだ。で小原氏は今、身を以てかかる中間的残滓の清算に当ろうと決心しているわけになるのである。
[#地から1字上げ](一九三三・八)
[#改段]
倫理化時代
一、法律の倫理化
一国の首相が、首相官邸で暗殺される。国務大臣や有力な政治家・有名な資本家の首が覘われる。警視庁自身が襲撃される。其他其他。そんな単純な直接行動をやって何の役に立つかと詰ると、之によって戒厳令とクーデターとへの口火を切ることになるのだと、甚だ尤もなことを云う。
私は何も、五・一五事件や更に溯っては血盟団事件に対する公判に就いて批評を下そうとしているのではない。五・一五事件の如きは、全国の新聞紙が、朝から晩まで、喋り立てている事件で、例えばどういう不快な節まわしの流行小唄でも、朝から晩まで聞かされると、いつかは耳について、何となく忘れ難くなるものだが、それと同じに、こう朝から晩まで、即ち朝刊といい夕刊といい、囃し立てられると、初め
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