ではないか。吾々は憲兵も持っていれば独自の裁判所も監獄もある。戒厳令も布ければ外交政策も植民政策も有っている。経済的、技術的にも自給自足だ。併しこの頃では何よりも遠大な社会理論を有っているのだ。×××の前には何物もないのだと第四師団司令部は考える。――大阪の警察部は併し「警官も帝国の警官だ」と云って譲らない。
 陸軍省と内務省とが、今度は、××しようかしまいかを考慮している。××とブルジョアジーとが次に××しようかしまいかを考慮し始めなければならなくなるだろう。
 一等兵は自分の日頃の願望が意外にも、満足され過ぎるのを見て、大変なことになったと後悔し始める。併し銃口を出た弾はもう自分の自由にはならない。自分は軍服を脱げば一人の××××に過ぎない、あの交通巡査だって××をとれば矢張俺と同じい××××かも知れない。処が俺達の初めのほんの一寸した×××、俺達自身をおいてけぼりにして、独りでドシドシ進んで行く。これは一体どうなることだろう。元々が小心な彼は、この頃自分に対する×××の弁護的な態度にまで気が遠くなるものを感じるのである。

   四、修身と企業

 巡査の特権が矛盾を感じさせたの
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