「ブルジョア」経済会議のダラしなさを見ろ!「ブルジョア」軍縮会議が何だ!)この「転向」によってすっかり悦に入っているものは、決して裁判長や教悔師ばかりではない。
 土堤評によると、党員の相当上の方へ行くと、この転向に追従する人間も案外少くないかも知れないということである。だが又、当局が皮算用している程に痛快な大動揺も、なさそうだという噂さである。前に云った山川均氏や青野季吉氏などは、それ見たことかと云った調子で、軽くひねって片づけているような始末である。
 大衆は案外、英雄崇拝[#「英雄崇拝」に傍点]をしないもののように見える。そうだとすると、「巨頭巨頭」という招牌もそれ程効き目がないかも知れない。この間ある有名な左翼出版屋が、ファッショに転向したそうである。ナチスの焚書に倣って、日比谷公園で過去の出版物を焚刑に処するそうだという噂まで製造された位いである。だが之は「巨頭」の転向より無論前だから、原因は無論「巨頭」の転向などにあり得ないことは云うまでもない。原因は外にあるのだ。「巨頭」だってこの原因には意識的無意識的に動かされないとも限らない。

   二、没落

 転向問題で以て花見
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