報道の責を検事局に転嫁して了ったようである。
処で、検事局の責任編集になる両巨頭の例の文書が早く出ればいいがと思っている矢先、吾々は思いがけぬ福音にありつくことが出来た。というのは、本誌と『改造』とが逸早く、佐野学、鍋山貞親の原稿全文「共同被告同志に告ぐる書」を掲げているのである。この福音は、新聞記者からでもなく検事局からでもなくて、雑誌編集者の驚嘆すべき手腕から来たことは明らかである。吾々は編集者が、私信のやり取りさえ困難な刑務所内からこの貴重な政治的論文を獲得して来た精励の程に、又この論文を殆んど一字の伏字もなしに印刷した英断の程に、敬服せざるを得ないと共に、一体之は原稿料を払っているかしらという、一寸世帯じみた連想も起こすのである。というのは、同じ原稿がこの二つの雑誌に印刷になっているらしいからである。之は普通の原稿ではあまり見受けない現象だ。
この文章又は例の「要項」の摘要に対する批評は山川均氏(『中央公論』)や青野季吉氏(『読売』)等の「左翼民主主義者」達から、相当コッピドク敢行されているから、両巨頭の思想がどこで間違っているかということは、否どこで正しいということは、読
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