きか否かは当分、と云うのは満州国皇帝陛下御滞在中、輿論の趨勢を見てからのことにすると新聞紙は伝えているが、他方美濃部排撃の一派は、やはり御滞在中運動を見合わせるという同じことを云っている。ここからも亦、天下の輿論が国家によってどういうものとして公認されているかが理性によって推論され得る。尤も之は理性による推論だから日本の新常識には通用しないかも知れぬが。
滝川事件では文部省の反省を促し、統帥権に就いては軍部の反省を促し、帝人事件に就いては司法部の反省を促した最近の美濃部氏は、文部省関係である教授免職は年の功で免れた代りに、軍部の反対と司法部の判定とによって、居ながらにしていつの間にか犯罪者となったのである。時間の又は時代の推移がこの結果を齎したとは云え、法律の専門家で而も立法機関たる貴族院の議員である博士さえ、ついウッカリしてこういう生存適応のやり損いをやるのを見ると、日本のムツかしい法律に無知であり而も立法の議に直接参画出来ない吾々素人庶民は、一日も安んじて時間を推移させることが出来ない、などと愚痴をこぼす者は逆賊であるかも知れぬ。
だがそういう不景気な話はやめて、もっと面白い話
前へ
次へ
全402ページ中332ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング