はこの学者の学説とその学術上の影響とを国家の見地から見て尊重すべきものと見倣したわけで、その点から云って夫々一個の美濃部主義者でなければならぬからだ。現在は美濃部主義者ではなくなったと云った処で、そういう転向は場合が場合だから弁解にならぬ。――まあ理窟はこういうわけだが、事実は、今まで責任を感じて一切の[#「一切の」に傍点]栄職を擲った奏請者はただの一人もいない処を見ると、必ずしも博士の例の栄誉に誤りがあったのではないことが立証されているし、博士も亦、その学説は云うまでもなく、一切の栄職を擲つ理由もないと主張している。他の人間共の云うのでは信用出来ないが、合理的に理性的に物を考え物を云う博士の言葉だから世間は広く之を信用するだろう。
で結局博士の学説に仮に何かの誤りがあったとしても(之は検事という専門家を信じる他ないので民衆の容喙すべき事柄ではない)、夫はその実質に於て名目程重大な意味のものではないのだ、という結論を、世間は這般の事情から惹き出すだろう。だが栄職は擲たない博士は、中央大学の教授とか、早稲田の教授とか、商大の講師とかいう不名誉な(?)職は擲つ決心になったらしい。で、免職
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