前において、当時京大教授側を支持した美濃部教授その他を罷免しろと、この鳩山君が迫って来て仕方がなかった、と述べたそうだ。之で見ると美濃部博士はすでにその時免職の可能性があったものと見える。
小野塚総長は名総長で、他の大学の総長や学長のように次官や局長級にペコペコせず、堂々と文部省に臨んだし、流石の軍部の教官も謝ったという噂であるが(之も噂だ)、今度の長与総長に果してそれだけの腕と腹とがあるだろうか。松田文相に呼びつけられて、管下の美濃部派自由主義教授達に緘口令を敷いたと聞いているのは本当だろうか。
それはとに角、博士は幸いとして無事教授を卒業して名誉教授となり、学士院の会員ともなり、更にその憲法学説の研究の功績を愛でられて勅選議員に勅選されるの栄誉に浴したのである。もしこの栄誉が誤り与えられたものとすれば、之を勅選し給うべく奏請した者は一人としてその補弼の上の責を免かれるものはあり得ない。少くともこの点は論議の余地のない程明らかと思われる。もし美濃部博士が一切の栄職を辞さねばならぬ大義名分があるとすれば、同様に之を勅選に奏請した臣下は一切の栄職を擲つべきだろう。なぜなら奏請する以上
前へ
次へ
全402ページ中329ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング