をさえおいて、発禁を命じた(?)のである。凡そ一国の大臣たるものは、須らく之だけの落ち付きと見識とを持っているべきだろう。
文部大臣のこの見上げた態度に較べて、文官高等分限委員会の態度は、何と不見識で軽はずみなことであるか。滝川教授の罷免という、社会的には輿論の対象となり法制的には疑問の焦点である処の、この困難な問題を、文部省がディクテートするままに、禄々調査もしないで即日安々と鵜呑みにして了ったのでは、どこに委員会の権威があるだろうか。況して文部大臣は、委員会が開かれる前から、委員会を××するに決っているような変な口吻を洩らしていたが、あれは何として呉れるのか。
文部大臣の権勢正に恐るべきものがあるのである。――処が、世間の噂によると、上には上があるもので、当の××××が中国地方の某代議士によって動かされているというのである。××××の折角の名誉のために、そういう事実はないのだと信じるが、併し噂のあること自身は事実だ。その噂によると、その某代議士が滝川教授の著書か講演かに、どうしたハズミからか、興味を持って、之こそ赤化思想であると云って、パンフレットまで造って、六十四議会で策動し
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