りもの歴史的大功績があるとすれば恐らく之だろう。多分この点は又、日本中の有識者が斉しく認める処だろう。
だが文部大臣たる以上、たかがスポーツの問題などに跼蹐《きょくせき》してはいられない。私は先月の本欄で、文部省が内務省などに引き廻され気味で、わずかにスポーツ干渉を以て憂さを晴らしているのを、文部大臣のためにお気の毒だと云ったのだが、今は文部大臣の名誉のために、之は失言として撤回する。文部大臣は内務省などから引き廻されるどころではない、わが文部大臣は、内務省に命じて、滝川教授の著書『刑法読本』を発禁にさせたのだそうである。(東京朝日五月二十一日付)。
之はJOBKで放送したものを出版したもので、去年の六月ほんの僅かな削除の後に発売を許された本だが、内容は素人の吾々にとっては非常に自然に変な無理がなく能く呑み込めるし、口絵には一枚の美人の写真さえ付いていると云った風で、まことになごやかな著書だという印象を消すことは出来ない。処がわが秀才文部大臣の卓越した頭脳は、BKのコセコセしたスイッチや逓信省の老婆心や内務省の無表情な警察眼をも洩れたこの本に、ニコニコしながら、而も悠々と一年間の間
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