か、司法省と××との対立云々と噂した。そこで法相はこう云って断わっているのである、「……に就いては種々な議論もあって中には陸海軍と司法省の意見が対立正面衝突でもした様に伝えるものもあるが、さようなことは全然ない」云々(東京朝日五月十一日付)。
 無論そういうことはあり得ない筈である。あったとしたら頗る変なことだろう。処がそんな変なことがまことしやかに噂されるということは、だから、二重に変なことでなければならないわけだ。どうも薄気味悪いことである。
 五・一五事件の「発表」のおかげで、吾々は五・一五事件が益々判らなくなって来た。懐疑論や不可知論が昂進して来ると、一種の妖怪談になってくる。お互い様に薄気味悪くなるのである。

   二、文部大臣の権威

 国際競争に限らず、勝負は機会均等でなければならぬ。二回戦で二対〇の勝利率のものでも三回戦では三対〇とも二対一ともなることが出来るのだから、三対〇をも二対一をも二対〇だと云って片づけて了うのは不合理である。六大学リーグ戦も今年から一様に三回戦までやることになったそうであるが、それは数学的に非常に慶賀すべきことである。新進の秀才文部大臣の何よ
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