方に就いて、司法省と陸海軍両省との間に、初め、不思議にも、見解の対立があったそうである。司法省の意向としては、従来の「お役所型を破って」、相当具体的に諸データを指摘するというやり方で公表しようとしたのであるが、××××からは、之に対し或る修正案が提出されたそうである。
司法省のような公表の仕方をすると、予審が決定しただけでまだ本式には確定していない犯行事実をば、確実の事実であるかのような印象を与える仕方で発表する結果になりはしないか、それでは、外のことはとにかく、××××の威信を傷ける惧れがある。そう陸海軍省側は故障を持ち込んだそうである。もっと抽象的な発表形式を採用しろというのが司法省案に対する修正案であったらしい。
こうやって「三省合議」の上で修正されたのが、今度公表された内容だとすると、多分それは、採り得べきであった具体性に較べて、まだまだ抽象的な形態に止まっているものに相違ない。なる程諸事実・人名・場処・時日・行動・其他のデータは立派に公表されているのだから、相当具体的だと云えば具体的だが、どうも吾々国民は、この頃馬鹿に疑い深くなっているので。
なる程、誤謬の可能性が、現
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