るものは、もはや単なる武士道ではなくて、実はもっとブロック性を持った王道[#「王道」に傍点]であることが明らかになって来た、併し何にせよ王道は武士道の進化したものであることに間違いはないようである。
 武士道=王道の権化である荒木陸相は云うまでもなく現内閣第一の花形である。予算会議に於て、又所謂「内政会議」に於て陸相はいつも中心人物になっている、処が先年の終頃から内政会議にはもう一人の花形が現われ始めた。後藤農林大臣が夫である。
 元来内政会議は農村対策問題が中心になって来ているもので、後藤農相の中心人物振りは寧ろ当然であるのだが、現内閣の持論である農村の自力更生主義の上に立って、後藤農相の内政会議は農村精神作興案なるものを採用したのである。之ならばあまり予算も掛らないし、それに凡ては精神が基礎で外の物質的な事情などはどれも精神の発動した結果に外ならないので、精神作興がいつも最も根本的な政策であるから、之程正しくて安上りな農村対策の出発点はない筈だ。而も恰も「愛国愛土の精神」こそ後藤農相の持論なのである。
 そこで農相は「百姓道場案」なるものを提示した。それによると、全国の各府県のうち
前へ 次へ
全402ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
戸坂 潤 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング