日付から引用)。之によると案外にも、まだまだ安心の出来るようなしっかりした人物がいるらしく、そう心配することはあるまい。

   三、武士道と百姓道

 荒木大将(当時は中将)が陸軍大臣になった時、最も興味のあるエピソードの一つだったのは閣下がいつもサーベル(指揮刀)ではなしに軍刀を腰にしているという話しだった。之は武士道[#「武士道」に傍点]を片時も忘れないという意味だそうで、即ち治に居て乱を忘れない精神の現われだそうである。もっと正確に云うと、一九三二、三年頃から一九三五、六年のことを考えているという精神であって、即ち非常時精神の表現なのである。
 尤も非常時と云っても、初めは右翼思想団の直接テロ行動が頻発して困るという時代相を指すのかと思っていると、実はそれよりも待ちに待たれる一九三五、六年が近いということを意味するらしいので、こうなると一体非常時というものは善いものなのか悪いものなのかは判らなくなるのだが、その善し悪しには関係なく兎に角非常時は非常時なので、それが荒木陸相の真剣なる軍刀となって現われたのである。
 その後東洋哲学が誠に急速な進歩を遂げると共に、陸相の軍刀が象徴す
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