いう、事実記事や予報記事までがあまりデカデカと新聞に載り過ぎるので、世間ではそんなものは日常茶飯事だというように思い込んで了う。
併し本当を云うと、治安維持法に触れるということは、道徳上最も悪いことなのだ、その理由は云わなくても判っているだろう、普通の人間世界ですでにそうなのである、平民にしてからがそうである。それに華族ともあろう者が何か普通の人間の真似をするにも程というものがあるのだ。「不良華族」の除名によって華族らしい華族の数が減って行くばかりではなく「赤色華族」によって華族の質が変って行くようになりはしないかを、私は心細く思わざるを得ない。
だが最後に、この憂鬱な傾向に、一条の光明を齎らした処の、一つの美談をつけ加えておかなければならぬ。例の起訴された三人の華族の子弟の一人公爵岩倉具栄氏の令妹靖子嬢は保釈中自宅の寝室でいたましくも剃刀自殺を遂げたのである。新聞が報道する処によると、名門の名をけがした自責の念の余り「反逆の血」を死を以て清算したのであって、華族界に対する一服の清涼剤として当局も意義深く感じつつ死そのものに対してはむしろ同情しているそうである(読売新聞十二月二十三
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